階級社会

時代と共に変わって来つつあるとは言え、
イギリスの階級社会は今だ根強い。
ヨーロッパ中何処でもそうなのかと思っていたが、
イギリスは特に顕著らしい。

例えば、昔から共和国のフィンランドでは、
イギリスのように、貧しい人々と
金持ちの住む地域はハッキリと違う、
なんて現象はないそうだ。
日本だって、極一部の治安の悪い歓楽地帯、
田園調布のような高級住宅街を除けば、
一般居住地域には、そう言う差があるとは、
ほとんど聞いたことはない。
新しい高級マンションの隣に
古い木造アパートが建っているのは、
特に珍しいことではない。

イギリスでは、階級に寄って、
読む新聞も違えば、好むデパート、
好むスポーツ、話す言葉すらかなり違う。
ママ友の家に「お茶」に誘われて行ったら、
紅茶と茶菓子ではなく、
夕食が一式出て来た…と言う話も良く聞く。
労働者階級では、夕食を「dinner」ではなく、
「tea」と呼ぶからだ。

念の為、イギリスの階級社会とは、
インドのカーストのように、
単に上が下を蔑む為にあるのではなく、
生活レベルが大きく異なると、
当然感覚や価値観も大きく異なるので、
その違いに寄るお互いの不快感を、
出来るだけ避けて暮らす為の工夫、
すなわち「区別」であるらしい。
やんごとなき方々が、ガサツな庶民と接するのは、
確かに不愉快だろうが、
一般市民だって、お高くとまった奴らと
付き合うのは、真っ平御免なのだ。

では、どのような階級構造になっているかと言えば、
まず大きく分けると、上級、中級、下級で、
人口比はピラミッド構造になっている。
だからイギリス人の大部分は、
下級、つまり労働者階級だ。
階級社会を良く把握できない日本人の多くは、
「平均的=中級」と勘違いし、
自分は中級だと言い張って、
イギリス人の失笑を買い兼ねない。

その三段階の、更に内部の構造は、
かなり複雑で、イギリスに長く住んでいない限り、
中々実感出来ない。

上級は貴族、その頂点にあるのが王室。
だから極僅かな人達しかいない。これは判り易い。

因みに現在では、城に住む貴族の中にも、
領民から税を取り立てている訳ではないので、
主な収入がなく、貧乏人は居るし、
労働者階級にも、高級車を何台も持つ
裕福な人達は居る(ただし趣味は悪い)。
階級の上下と貧富は、必ずしも比例しない。

人口の大多数を占める労働者階級は、
更に「ブルー・カラー」と
「ホワイト・カラー」の二つに分類出来る。
前者は、肉体労働系、第一次&二次産業、
店員等の単純作業、はっきり言ってヨゴレ仕事系。
青い色の制服が多いので、ブルー・カラーと呼ばれる。
後者は、知的・頭脳労働系、ディスク・ワーク、第三次産業。
主に背広+Yシャツ(英語ではwhite shirtと言う)を
着るので、ホワイト・カラーと呼ばれる。
実際に普段人々が「working class」と呼ぶのは、
この中でブルー・クラスの人達のことだ。

日本に興味がある、観光で日本に行く、
仕事で日本に赴任するのは、
大抵ホワイト・クラス以上のイギリス人なので、
日本人がブルー・クラスの人々と交流する機会は、
まずほとんどないと言って良い。
だから、そういう人達がイギリスに多く存在することを、
今だ良く知らない日本人は圧倒的に多い。

サッカーはイギリスが本家・本場だからと思い、
サッカーの話題をイギリス人に振ってみて、
思わしい反応が返って来ないことにガッカリした日本人も、
少なくないのではないだろうか。
サッカーは、主にブルー・クラスが好むスポーツなので、
日本に来るイギリス人の中には、
サッカーに全く興味のない人も多いからだ。

夫は、差別ではなく真面目に、
大抵のブルー・クラスの人達とは、
共通の話題がほとんどなく、
会話が長続きしないと言う。

大学を卒業すると(日本のように
金さえ払えば誰でも入れる私立大学はないので、
大卒者自体が少ないように思われる)、
一応自動的に中級と下級の中間位になるらしい。

その他にも、イギリス国教会の牧師や
バブリック・スクールの教師など、
幾つかの職業は、自動的に中流階級の下となる。
こういう人達と付き合う機会は普通にあるが、
ホワイト・クラスとの生活レベルや
価値観やセンスの違いは、
ほとんど感じられない。
つまり、下級上と中級下の差はない。

ところが、中流の下と上(=upper middle)では、
はっきりと大きく違う。
中級上は、明らかに平民の中での名門や富豪層だ。
「中級の中」と言うのは余り聞いたことがなく、
おそらくここに、庶民とセレブを隔てる
高~い壁があるのだろう。

ウィリアム王子と結婚したキャサリンさんは、
平民と言えど、この中級上の出身だった。
しかし何でも、母方の祖母が労働者階級の出身で、
その為か、又従兄弟にフィッシュ&チップス屋がいるらしい。
未来の王妃の親戚がチッピー屋…
と言う事で、婚約時に話題になった。

現代は、「移民」と言う新しい層が、
イギリスの社会に大きく加わっている。
移民の中にも、元々の国民性が勤勉だからか、
並のイギリス人より遥かに意欲的に勉強し働いて、
一財産を築いて成功している人達も居れば、
元からこの国の豊かな福祉目当てだけで
やって来る人達も居る。
ブルー・クラス系の中でもきつくて汚い職業は、
最早生粋のイギリス人はやりたがらず、
外国人労働者に頼っている部分が多い。
貧困や差別から抜け出せずに、
犯罪者集団になる移民も少なくない。

更に現在は、労働者階級より下の、
一生生活保護を受けて、無料の公営住宅に住み、
犯罪と縁が切れない生活を送る、
「働かない層」と言うのも存在する。
かつては、非生産階級と言うと、
貴族等の裕福層だけだったが、
今や「働かない最貧民層」は、
英国社会を大きく揺さぶっている問題だ。
[PR]
by piyoyonyonyon | 2014-10-03 15:03


<< 最下級層の町 近所のトラバント >>